先週の一冊『ルポ 若者ホームレス』

私の勤め先である、若者の労働にかかわるグループJOC(ジョック)でも、若者の「住居」の問題について考えなければならない機会が年々増えています。
住む場所についての困難を抱える若い人が多いという実感と、本書のテーマは地続きだと感じます。

飯島裕子/ビッグイシュー基金・著『ルポ 若者ホームレス』(ちくま新書)。

第一章にて、まず「ホームレス」の定義について紹介している箇所があります。

日本で2003年に成立した「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」では、 「都市公園、河川、道路、駅舎その他の施設を故なく起居の場所とし、日常生活を営んでいる者」 をホームレスと定義しているそうです。

しかしEU加盟国では、それ以外に「知人や親族の家に宿泊している人、安い民間の宿に泊まり続けている人、福祉施設に滞在している人なども含んでいる」とのこと。

後者の定義に広げると、私の個人的な人間関係においても「ホームレス状態の人」や「ホームレス状態だった人」がたくさんいます。

定義の拡大は、支援の対象を広げるとともに、「ホームレス」という語につらなる偏見を減らしていく意味も持ちそうです。
ホームレス状態の人が陥りやすい問題はあるとしても、それは共通の社会問題からもたらされていることの現れであって、「住居の危機に直面する」ことと人間性にはなんら関係がありません。
それを考えるための礎としても、「住居の危機」と「ホームレス」という言葉の距離を縮めることはとても必要なことと感じます。

しかし、だからこそ日本で定義を拡大することは、難しいのかもしれません。
「ホームレス」が本人の、「自己責任」の問題でなく、社会機能に解決すべき課題があると認めてしまえば、福祉政策や経済政策の問題点まで浮かび上がってきてしまうわけですから。
政治権力を持つ人たちによって、それが面倒な都合の悪いことと捉えられる風潮が強くなっていること自体も、忸怩たる日本の現状です。

本書に出てくる「若者ホームレス」の中に、きっと多くの人が、自分自身や自分の身近な人によく似た姿を見出すのではないでしょうか。
そこから、「ホームレス」という言葉で切り離して見てしまっていた、いろいろなことがつながって見えてくるように思います。

素材出典:pngtree.com

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