出版したい!③ ー『三文書』の魅力・DOP編

さて、以前の記事(出版したい!①)にて予告したとおり、ここでは出版に至るまでの道のりだけでなく、私が出版を志したモチベーションの元である文書の魅力についても書いていきたいと思います。

その文書というのが、働く若者のグループJOC(ジョック)の国際公式文書である『DOP』『TOE』『ROLWA』の基本三文書です。

今日はまず、『DOP』について。
DOPは”Declaration of principle”の略。つまり原則宣言です。三文書の中でも最も基本的な、運動の精神や基準となる考え方を記した文書となっています。

構成としては、「はじめに」という冒頭文で本文書ができた経緯やJOCの歴史的背景などを説明し、その後の各章で、「何を出発点とするか」「何を目標とするか」「どんな特徴を持つのか」といった運動の原則が詳しく書かれています。

冒頭文の説明を読むと、本書は1975年に最初に採択され、1987年に改訂の手続きが開始されて、1991年の国際評議会にて最終確認されたとあります。

90年代初頭に作られたにもかかわらず、この冒頭文に書かれている「今日の世界」は、あまりにも現代世界のあり様と一致します。
その部分を、1ターム丸ごと抜き出して紹介したいと思います。

・今日の世界

今も、JOC 運動が生まれた時と同じように、働く若者たちは資本主義の矛盾に直面しています。そしてその矛盾はこれまでよりもさらに深刻になっています。共産主義の崩壊は冷戦の終結をもたらしました。そのことを理由に、資本主義を支持する人々は、資本主義が今、人類にとって唯一実行可能な経済システムであると主張します。私たちが生きるこの社会は、国際的な規模で、資本主義が支配し操作する社会となっています。

資本主義は、経済的に豊かな国と貧しい国との格差を拡大させます。それは確実に、国の中での富裕層と貧困層の格差拡大にもつながっています。技術革新も、情報も、権力者たちによってコントロールされ、ごく少数の富裕な人々が支配し、搾取し、大多数の貧しく排除され続けている人々になり代わって多くの決定を下します。

富は増え続けていますが、それは少数の富裕な人々の利益にしかなりません。世界中で失業者が増加しています。不安定で劣悪な仕事や、インフォーマルセクター(非公式な経済分野・国に認められていない労働)の仕事に就く人も増え続けています。また、生計を立てるために移民労働者となることを余儀なくされる人もいます。女性は男性よりもさらに搾取され、支配されています。先住民は先祖の土地を追われて言葉や文化を脅かされ、時には滅ぼされています。

環境に配慮することなく、天然資源が破壊されています。多くの国で、人種差別やナショナリズム、宗教への狂信主義が、排除の加速をもたらしています。消費主義は極端に押し進められ、物質主義や競争主義、個人主義が広がっています。それによって、絶望し、人生の意味を見失い、将来に希望を持てない人々が増えています。

いくつかの国では、かつて労働者たちが獲得した権利も徐々に失われています。労働者階級の団結による影響力や活力が、大きく後退しています。その中で、労働者階級は受け身の立場に置かれ、現在の社会に代わる新たな社会の創造を求める声は、未だ無きものとされています。

一方で、従来のかたちの労働者組織に並び、新しいかたちの組織も現れています。この組織はさまざまな生き方をカバーし、新たな課題に立ち向かっています。これらの団体と運動はすべて、「社会は変革することができる」という希望をもたらすものです。

DOP 原則宣言

資本主義が現代における世界の原則と思っている人はたくさんいますが、その実、資本主義が何かを正しく理解している人はどれだけいるのでしょう。私も難しい経済学の話まではわかりません…。

ただ、私が資本主義の話題において見落とされがちだと感じていることは、資本主義の原理の中には「資本家」がいるということです。資本家とはつまり、資本を持っていて、労働しなくても資本を運用することで財産を増やしていける人です。

資本家に対比されるのは、「労働者階級」。運用する資産を持っていないため、自分の労働力で生活費を稼がなければならない人たちのことです。学生や失業者もここに含まれます。

このDOP・原則宣言は、働く若者の運動であるJOCが、資本主義社会における労働者階級の運動であるという重要な位置づけを、ここで明確にしているのです。

素材出典:写真AC

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