体が動くこと #NoPrideInGenocide

ここの記事をなかなか更新できなくなってしまって、テーマ性のある記事を書くのが最近の私にはなぜか難しいので、ちょっと日記みたいな形で徒然なるままにだったら書いていけるかな…と挑戦してみることにします。

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6月はプライド月間=Pride Month。
毎年この時期になると何かしないと、とちょっと気合いが入る。
しかし今年はPrideMonthに入ってすでにショックなことが次々起こっていて1、もともと気力も体力も大いにあるタイプではない私のなけなしの気合いは空気が抜けてへなへなになっている。

本当はこういう時こそ闘わなければならないとはわかっているけれど、怒った後にへなへなと寝込むといった具合で過ごす日々。
清志郎の声で「世界はまだ夜明け前だ 光は見えない」という歌詞2が最近よく頭に流れてくる。

東京のプライドパレードは今年から共同代表が変わり、名前も「Tokyo Rainbow Pride」から「Tokyo Pride」へ。
そして何より大きな変化は、イスラエルによる虐殺に加担しているBDS(ボイコット、投資撤収、制裁)対象の優先企業をスポンサーから外す対応をしたこと3。昨年まではそれらの企業が会場のかなりの部分を占めていた。
とはいえまだまだ市民のデモよりは企業色の強いイベントというイメージは拭えないが、今年はどんなものか行ってみようかな、という思いはあった。

私は前共同代表の「マーケットになって、はじめて人権が得られるという側面はあると思う」という発言4に怒り心頭した2017年からずっと、パレードには参加していなかった。
昨年は友人に誘われて、イスラエルのジェノサイドに抗議しパレスチナに連帯するチラシやバッジなどを配るアクション5をするために、7年ぶりに会場を訪れたけれど、あまりにも大規模になり、企業ブースだらけになった会場に呆然とした。

今年はただ会場に行くだけよりはパレードを歩こうか、という気持ちも、数日前まではあったけれど、前日くらいになって、まだ隊列に加わるほど自分の気持ちがあのイベントにコミットしていないように思えてきた。

WAIFUというクィア・フェミニストのグループ(メインの活動は「ジェンダー/セクシュアリティ/人種/年齢にかかわらず安心して楽しめるセーファースペースのパーティ」)が、「プライド月間はパレスチナに連帯を示す黒を着よう」と呼びかけていたので、元々黒ずくめに白黒のクフィーヤを身につけて行こうとは決めていた。

とりあえず、この格好で隊列に出会えたらプラカードを見せたり、プラカードを手に会場をうろついたりしてみるか、と決めたけれど、出かける直前になってもなかなか気力が湧かず、重い腰を上げるようにのろのろと出発。
ところが行きの電車の中でツイッターを開くと、前述のWAIFUがパレードの沿道でスタンディングをすると発信しているのを見つけて、正直な気持ち、助かった、と思った。
これでやっと、行く意味が見出せる。

20代の頃、いろいろなデモに参加するようになったくらいの頃に、社会問題に義務感とか同情で関心を持とうとするのではなく、「自分ごと」として捉えられるようになると自然と体が動くんだな、と実感したのを覚えている。
今回、プライドパレード自体には全然動きたがらなかった体が、パレスチナ連帯スタンディングには動く感覚があった。私は性的マイノリティ当事者で、自分の知る限りパレスチナにルーツはないけれど。

沿道に立って歩いてくるパレードの人々を見ていると、だんだんわかってくる。
市民運動としての当事者orアライ団体以上に、企業フロートがかなり多い。(そしてBDS優先対象企業は外されたものの、三井住友グループ、ロレアル、Kirinなど、イスラエルとの取引がある企業もかなりあった)
やっぱり私の身の置き所は、パレードの中ではなくこの沿道だ、と感じる。
もちろん企業の中にも当事者はいるだろうし、隊列の中にスタンディングに共感してくれる反応の人もしばしばいたけれど、おそらく企業フロートで多数派を占める、“勤め先のコンプラ活動に善意で参加し笑顔で「ハッピープライド」と声をかける人たち”は、このスタンディングの意味すらピンとこない様子の反応も多かった。

活動団体系のフロートだとすごく反応が良い時もあって、隊列の中から「Free Palestine!」のコールが始まった時や、拍手や歓声に包まれた時もあった。しかしそれと同時に沿道の私たちの背後を「Fxxk Palestine!」と叫ぶシオニストが通り過ぎていく。
なんと劇的なワンシーン…などと呑気に思ってしまったけれど、手を出してくる可能性もあることを考えるとそんなに呑気なものでもない。
先導車でマイクを持ってる人が率先して「Free Palestine」とか「パレスチナに連帯します」と言ってくれたのはHIV関連のフロートとトランスジェンダーのフロートで、どちらもマイクを持ってた人はドラァグクイーンだった。あとバイセクシャルのフロートもすごく良い反応だったと記憶している。
ハイタッチしにきてくれた人、私のプラカードを指差し大きく「イエス!」と言ってくれた人、みんな忘れ難い。
もう一方で、沿道の私たちを見て「あ、これは違う団体か」と言った人がいたことも忘れ難い。スタンディングの主催者の1人がその背中に追いかけるように「違わないよ!パレスチナにもクィアはいます!」と叫んでいた。

そう、私たち(と曖昧な括りの主語を使ってみる)、クィアって言葉が好きなんですよ。セクシャルマイノリティとか、LGBTQ+とかよりも、クィアという言葉にはそれ自体に批評性とプライドが含まれている。誰がクィアで誰がクィアじゃないかを分類するための言葉ではない。連帯する私たちが誇りを持って名乗るのがクィア=Queer6

スタンディングでも、パレードの隊列から一番最初に目に入るところに「QUEER + FEMINIST WITH PALESTINIAN LIBERATION」という大きなバナーが掲げられていた。
でもふと思った。企業参加の非当事者とか普段からそこまで関心を持っているわけじゃない人は、クィアって言葉をまず知らないのかも…と。
だからって「知らない人にもわかりやすい言葉にしてあげようね」っていうのは違う気がするけれど、プライドパレードの隊列に掲げるからこそ選んだ言葉がけっこう通じない事態があるというのは、事実として、ちょっと覚えておかなければならないな、とも思う…

クィアだからこそ、パレスチナに連帯しジェノサイドに抗議しなければならないという感覚は確実に私の中にある。
それはイスラエルのピンクウォッシュ7の事実のためでもあるし、シオニズムの中に特定の人種に対する差別の側面が明らかに見えるということもある。
しかし、それ以上に、今起こっていることはグレタ・トゥーンベリ氏も言っているように前例のない事態8。あまりにも無法な大量虐殺であり、民族浄化を狙うジェノサイドであり、そしてボイコットしきれないほど多くの企業の資本がそのジェノサイドに投入されている。年金すら使われているのだから、市政の私たちは避けようがない。
私たちは生活を人質に取られて虐殺に加担させられながら生きている。この世界に暮らす人間として、「自分ごと」として私の体は自然と動く。(もちろん気力・体力が足りず動けないことも多々あるけれど…)
レインボーフラッグを振っている人とパレスチナ国旗を振っている人が、違う団体で関係ないなんて言っていられる事態じゃないことが、あのスタンディングの意味がよくわからなかった人の何割かにでも、届いていることを願う。

{QUEER + FEMINIST WITH PALESTINIAN LIBERATION」と書かれた大きなバナー。その上に「QUEER AS IN パレスチナ解放」と書かれたプラカード
「PRIDE IN RESISTANCE クィアとパレスチナは生き続けるこれからも」と書かれたバナー

プラカードはウィメンズマーチの時に作ったものを再利用した

パレスチナ国旗に「Stop Genocide」と書かれたプラカードと、「トランス差別やめろ」と書かれたプラカードを持っている2人の人物

余談。
12時からスタートしたパレードで、ゴール地点に近いところに14時から立ち、最後のフロートが通り過ぎたのが17時過ぎ。
いくらなんでも長すぎる。警察、フロートとフロート分断しすぎじゃないか?次のフロートが来るまで10分以上待った時も優にあったと思う。
お陰で翌日起きたら腰がビキビキでした。3時間スタンディングはさすがに限界超えてた…
警察権力め、よくも私の腰を…と怒りは権力に向けておく。

  1. トランプ政権、6月を「女性保護の月」に LGBTQ月間を否定https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN03EAQ0T00C25A6000000/
    同性の配偶者をもつ俳優ジョナサン・ジョスさん(59)が銃撃され死亡…容疑者は同性愛を嫌悪か /米テキサス州
    https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2025/06/04/2025060480164.html
    海軍艦船から同性愛者擁護活動家ミルク氏の名を削除 プライド月間に
    https://www.asahi.com/articles/AST637K5ZT63UHBI009M.html
    米企業がプライドイベントのスポンサーから次々と撤退。DEIを標的にするトランプ政権の影響が現れる
    https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_683ff116e4b0cc376200d5c9
    神戸レインボーフェスタにて虐殺・ジェノサイドに反対するプラカードが排除される
    https://x.com/naya_n___/status/1929094510790791185 ↩︎
  2. 忌野清志郎『涙のプリンセス』
    https://youtu.be/I4eM18fxg1c?si=Aaf8pWpX5-VgiUhQ ↩︎
  3. 東京プライド、今年のスポンサーにBDS対象なし。イスラエル支援企業のボイコット呼びかけ団体からは「非常に勇気のあるもの」と歓迎の声https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_683e9fd1e4b02a49cce6c2cf?utm_campaign=share_twitter&ncid=engmodushpmg00000004 ↩︎
  4. 「声上げることで変わってきた」 共同代表理事・杉山文野さんに聞く
    https://mainichi.jp/articles/20170503/mog/00m/040/002000c ↩︎
  5. 虹色があふれる中、黒い服で伝えたパレスチナへの連帯。それぞれの思い【東京レインボープライド2024】
    https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_66220a27e4b01006be164a24 ↩︎
  6. クィア | LGBTQ+ Wiki | Fandom ↩︎
  7. ピンクウォッシュ | Magazine for LGBTQ+Ally – PRIDE JAPAN ↩︎
  8. https://x.com/inlaforet/status/1931130628327498196 ↩︎
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