阿佐ヶ谷姉妹のモーニングルーティン動画はなぜ女子に刺さるのか

「阿佐ヶ谷姉妹のおばさんだってできるわよ」という番組が2019年11月26日、日本テレビで放送されて、話題になっています。

お笑いコンビ・阿佐ヶ谷姉妹がさまざまな若者文化に挑戦する企画ですが、ロケ地の大半は、2人の自宅アパート。

阿佐ヶ谷姉妹の私生活といえば、アパートの隣同士の部屋に住んで、半共同生活のような暮らしをしていることで知られています。40代独身女性2人の楽しげなライフスタイルに憧れる人も多く、かくいう私もその一人。
いつかお2人のように、仲良しの友達と適度な距離感で寄り添って暮らせたら。 そんな気持ちで、迷わず録画しました。

水卜アナに完全に刺さったモーニングルーティン動画

阿佐ヶ谷姉妹を中央に、番組MCに水卜麻美アナと陣内智則、そして阿佐ヶ谷姉妹と同じ40代の一般女性たち数人がゲスト席につき、スタジオでいくつかのVTRを見ながらコメントしていく形式の番組。

やはり出色だったVTRは、放送前からYouTubeで300万回再生されるほど話題になっていた阿佐ヶ谷姉妹の「モーニングルーティン動画」です。
Yotuberの間で最近流行している、朝起きてから出かけるまでの「モーニングルーティン」を映し出す動画に、阿佐ヶ谷姉妹が挑戦し、実際にYouTubeにアップするという企画です。

その動画がこちら。

面白かったのが、この動画をスタジオで見ていた水卜アナの反応。
別々の部屋で寝起きしているけれど、朝ごはんは一つの部屋に集結して一緒に作って食べる2人に、「なんか素敵な日常…」と感じ入った様子の水卜アナ。
2人が食卓を囲むシーンに至っては、「幸せってこういうことだ…」と呟くほどに、何かが心に刺さったよう。
対して陣内智則は、その言葉を「ボケ」と認識したようで「いや絶対違うと思うよ」とツッコみます。

しかしそんな陣内も、見終わった後には「何やねんと思ってたけどちょっと面白かった。もう一回最初から見たい」とコメント。どうも彼は、テレビのセオリーで「ここはツッコミを入れるべき」と考えてしまう気持ちと、素直に魅力を感じる気持ちとの間で揺れているように見えます。
しかし、「セオリー」を重視する陣内が、このスタジオでは完全に少数派になっているのも印象的です。

女性たちももちろん、マイペースかつどこまでも庶民派な江里子さんと美穂さんの様子に、終始笑わされてもいるのですが、それは「何やねん」という笑いではないのです。笑いのある優しい2人の日常に、心から魅了されているのです。

そして32歳の水卜アナに、人生の少し先を行く2人のこの映像が誰よりも響いたというのも、考えさせらえます。
「すごかった」「完全に刺さりました」「お2人の日常を見ていると穏やかで幸せな気持ち…」というガチめなコメント。
私も水卜アナと同世代として、何かわかるような気がします。

優しさに包まれたなら人は泣いてしまう

そして意外なほどの感動を呼んだのが、番組エンディングテーマを阿佐ヶ谷姉妹が歌う企画。
ゲストのゴスペラーズの協力のもと、松任谷由美の『優しさに包まれたなら』で見事なハーモニーを完成させた阿佐ヶ谷姉妹に、スタジオの女性たちがこぞって感涙するという事態が発生しました。

陣内は例のごとく「なんで泣いてるんですか皆さん!どこに泣けるとこあったの!?」とツッコんでいましたが、その実彼も、歌の途中では、「泣きそうになってきたな…」と溢しているのです。
陣内氏、どこまでも忠実に「テレビの仕事」をしようとする人だなあ。

私もその歌声の素晴らしさと、歌う2人の晴れ晴れとした表情に、思わず涙腺が緩みました。
阿佐ヶ谷姉妹の優しさに包まれて、みんな幸せで泣いてしまう。その様子がちょっとおかしくて笑えてしまう。こんな奇跡のような番組、ちょっとないですよ…。

尊重し合うというシンプルな価値

阿佐ヶ谷姉妹の素敵なところの一つに、「互いに向ける言葉が常に優しい」ということがあります。
互いのおかしな行動にツッコミを入れる時でさえも穏やかな口調で、尊重し合う柔らかな空気が流れています。

相手を尊重する姿勢はお互いに向けてだけでなく、出会う人すべてに向けられます。
他のVTRでは、 GENERATIONS from EXILE TRIBEのメンバーたちを自宅に迎えて交流する企画や、コスプレイヤーの伊織もえさんのレクチャーのもとコスプレに挑戦する企画がありましたが、世代の違う若者ともすぐに良い関係を築く阿佐ヶ谷姉妹たちの様子には、静かな驚きがありました。

それはきっと、阿佐ヶ谷姉妹に相手を否定したり腐したり、ジャッジしたりするような雰囲気がまったくないからだと思います。
異文化な新しい世界もすんなり受け入れて挑戦し、楽しんでいる2人に、若者たちも冗談でも「おばさん」と蔑むような様子は一切ありません。
立場の上下なく、しかし礼儀は守り、リスペクトしつつ楽しみ合える関係性が、瞬時に築かれているのです。

阿佐ヶ谷姉妹のようなライフスタイルは、現代の日本社会ではある種の「覚悟」や「勇気」のいるものとなってしまっています。
結婚せず、性愛関係のパートナーを持たずに40代、50代を迎えることは、世間では「淋しさ」と重ね見られてしまうことが本当に多いと思います。

しかし、阿佐ヶ谷姉妹のモーニングルーティン動画を見れば、そんな淋しさとは無縁の、日常を穏やかに楽しく生きる2人の姿に出会えます。
そばにいる人と優しい声を掛け合い、尊重し合うというごくシンプルなことが、結婚やパートナーシップという枠組みに負けないくらいの価値があるということを、目の当たりにさせられるのです。

動画をまだ見ていない人にはぜひ見ていただきたい。きっとみなさんの中の「幸せ」の価値観が解きほぐされて、少し楽な気持ちになれるのではないかと思います。

出典:YouTube – 阿佐ヶ谷姉妹のモーニングルーティン

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