【ドラマ短評】BLは新たなフェーズに突入?

ご無沙汰しております。およそ8か月ぶりの投稿となってしまいました。
投稿が途絶えていたのは、しばらく小説を書くことに専念していたからなのですが、そちらもようやく落ち着きました。

ただその間も、タイBLに始まって台湾やフィリピンのBLドラマ、その他いろいろな国のクィア映画など、映像作品だけはやたら見ていたので、ここを再開するにあたってまずはそれらの短評だけでも書いていこうかと思います。

Be Loved in House 約・定~I Do (台湾・2021)

脚本にいくらかの無理やりさ、回収されない伏線や、わかりにくさがあるものの、人物の心の動きの描かれ方が優しく丁寧で、ここ最近の台湾BLドラマでは個人的最ヒット。

モチーフとして登場する『星の王子さま』の主題にも重なるように、相手ために自分の時間を費やし、いたわりあうことで惹かれあっていく描写が愛おしい。

多くの実写BL作品に描かれた「親に同性愛をカミングアウトするシーン」の中でも、本作のそれは特に美しい名シーンといえるのでは。主人公石磊(シー・レイ)を演じる王碩瀚(ハンク・ワン)の繊細な演技も良い。

BL作品のセオリーでは、キャラクター性や関係性によってSEME・UKEの役割がわかるように描かれることが多いけれど、本作ではそれがメインカップル・脇役カップルともに曖昧。しかし特に違和感を持たず「これはBLだ」と感じられる。BLをBLたらしめるセオリーとは何か?とも考えさせられる。

Call It What You Want~BLドラマの作り方~(タイ・2021)

BLドラマの監督と主演俳優が恋仲になってしまうスキャンダラスなラブストーリー。BLドラマ制作の裏側があまりにも赤裸々に描かれていると話題の一作。

俳優に対する無理なダイエットや整形の強要、携帯も取り上げられプライベートを監視される人権侵害、さらに性的加害と、かなり衝撃的な内容だけれど、描かれている問題が大きいゆえに疑問も残る。

本作のAam Anusorn Soisa-ngim監督は以前からBLドラマ制作現場に関わっているので、描かれている俳優の被害は、それらの現場で見聞きしたことでは、と想像する人が多いだろう。しかし、ここまで酷い人権侵害や加害行為が描かれていると、作品だけの告発でいいのだろうか、そういう実態があるのなら、本来なら名指しで実際に告発されるべきではないのか、と不安になる。

同時に、本作で描かれているのはBLドラマ特有の問題(カプ営業やRealPersonShipなどの問題はBL特有といえるだろう)というよりも、芸能界全般における、若い俳優やアイドルが直面する問題のように見える。むしろ女性のアイドルや俳優の方が、早くからこうした加害に直面していたのではないだろうか。多くの社会問題がそうであるように、男性に被害が及んだ途端に問題が表面化する構造になってしまっていないかは、注意が必要な点だ。

また、主役カップルの恋愛描写の中にかなりセクハラ的なアプローチがあったのも疑問点だ。作中で問題として指摘されるのかと思いきや、そのままロマンスとして流されてしまって拍子抜けした。性的加害の問題も扱っているだけに、どういう倫理基準で製作しているのか訝ってしまう。

シーズン2も近々(2021年9月)日本で公開されるが、疑問点が解消されるかどうか。

Lovely Writer The Series(タイ・2021)

「BLドラマの裏側」つながりで、もう一作。
こちらはBLドラマの原作者と主演俳優の恋を描いているが、間違いなく2021年のBLドラマを代表する一作といえるヒット作だ。

前述の『Call It What You Want』が現実感を重視し、主役のビジュアルもほかのBL作品にはあまりないボサボサの長髪なのに対して、本作はヘアメイク・衣装などにおいて役者のビジュアルの魅力を引き出すことにかなり力を入れ、そして成功しているのも印象的。

BLドラマ業界への問題提起部分は、制作側の圧力も多少は描かれつつも、主眼は俳優をカップル視するファンの視線や、ファンの目を気にしすぎるあまり自分の人生を見失ってしまう俳優などに置かれている。

しかし、ファンと俳優の関係に注視するなら、FCのような運営責任を持つファン活動や、ポリティカルな批評をするファン、逆に訴訟レベルの誹謗中傷やセクハラをするアウトなファンなど、多様なファンの姿が描かれず「ただイベントやSNSで好き勝手騒ぐ存在」というどっちつかずの描き方のみだったのは不十分に感じられた。

一方で、BLではよくロマンスとして肯定的に描かれて流されがちな、暴力や財力に物を言わせる強引な恋愛アプローチに疑問を呈しているのは、特筆すべきポイント。
恋人同士の関係を構築していくためのコミュニケーションを、同性愛者のぶつかる差別の現実も組み込みながら丁寧に描き、全体としては優しく可愛らしいラブストーリーとして完成度が高い。

とくに方向性を決めず最近観たものを3作上げましたが、こうして並べると、BLドラマもこれまでの「BLセオリー」が覆されたり、自己批判を取り入れたりと、新たな段階に進みつつあることが見て取れる気がします。2021年のBLドラマはまだまだ放送中、制作中の話題作もあり、これからさらに新たなフェーズに突入するのか注目したいところです。

素材出典:pngtree

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